2024年07月06日
脛(すね)の痛み/シンスプリント
脛(すね)の痛みの症状として、シンスプリントが
あります。
市民ランナーが増加傾向にある昨今、この傷病を
経験されたことがある方や耳にされたことがある
方も少なくないかと思います。
シンスプリントとは
“shin”は「脛(すね)」、”splint”は「全力疾走」で
す。
まさにランナーに関するスポーツ障害の代表的症
状と考えられます。
走る競技以外では、ジャンプや切り返し動作など
を頻繁に繰り返す運動に散見されます。
シンスプリントは別名として内側脛骨ストレス症
候群(Medial Tibia Stress Syndrome:MTSS)とも称
されます。文献によっては、これらを区別すべき
とするものもありますが、多くの場合は同様の傷
病として解釈されます。
症状と病態
症状は、すねの前方から内側にかけての頑固な痛
みが中心です。痛みの自覚は運動開始後に速やか
に現れる場合や、ある程度運動した後に出現する
場合など様々です。
痛みの原因は、すねの骨である脛骨の骨膜炎で
す。脛骨に付着する筋肉が過剰に脛骨の表面へ
牽引力を加え、またジャンプやランニングが反
復的な衝撃となり痛みを誘発すると考えられて
います。
基本的にはオーバーユース、つまり運動などに
よる過度な負荷が症状のきっかけとなります。
要因
傷病名の通りランナーの約10-20%前後に発症する
との報告が多数あります。
また男性に比べ、女性に発症しやすい傾向がある
ようです。
幅広い年代で認められますが、個人的な感覚とし
ては学生アスリートで多くみられるように感じま
す。
学生アスリートのスポーツ障害について
↓
/blog/スポーツ障害%e3%80%80学生アスリートのケア/
またビタミンD欠乏や足関節底屈(つま先が下に向
く動作)、股関節外旋(太腿が外に捻れる動作)に対
する制限は症状誘発に関連するとされています。
検査
徒手検査として片脚ジャンプによる痛みや、内く
るぶしの直ぐ上から脛骨に沿って押した際の痛み
は、特徴的な所見のひとつです。
画像検査では、MRIによって脛骨の炎症に伴う骨膜
や骨髄の浮腫が認めれる場合があります。
しかし、シンスプリントを疑う症例に対し実施さ
れる画像検査の第一選択が、MRIとなることはあ
まり多くはありません。
このような場合にエコーでは脛骨の骨膜が肥厚し
ている様子を確認することができ、MRIに比べ安
価で簡便に検査を受けることが可能と考えられま
す。
鑑別
シンスプリントは適切な運動制限を行わない場合
症状が進行し脛骨疲労骨折を発症することがあり
ます。この疲労骨折では、初期にレントゲンで判
別できないことも珍しくありません。
また、慢性労作性コンパートメント症候群といわ
れる筋肉内の圧力が異常に高くなってしまう疾患
や機能性膝窩動脈絞扼症候群などの血管に関連す
る疾患も時に類似した症状を認めることがあり鑑
別が必要です。
治療
まずはランニングやジャンプの繰り返し動作を制
限し、運動強度の適正なコントロールをすること
は欠かせません。
その上でヒラメ筋や後脛骨筋、長趾伸筋などの脛
骨に牽引力を与える筋肉のストレッチやリラクセ
ーションが有効です。
また超音波や電気治療なども併用して実施するこ
とは、回復を後押しすることが考えられます。
当院でのスポーツ障害に対する治療について
↓
https://asano-kasukabe.com/sports/
まとめ
ランニングやジャンプなど繰り返しの外力によっ
て発症するシンスプリントに関して、自身の経験
からも症状の原因となったと考えられるトレーニ
ングを継続しながら痛みの改善を期待することは
難渋する治療方針であると考えます。
アスリートに多く発症する背景から休息を取りに
くいことは理解に難くないのところですが、症状
が進行して複雑化したり、いたずらに治療期間を
遷延化させるよりは適切な安静や患部への負担を
回避したトレーニングメニューの再考が肝要で
す。
〈参考文献〉
1)Bhusari N, Deshmukh M. Shin Splint: A Review.
Cureus. 2023 Jan 18;15(1):e33905.
2)Deshmukh NS Jr, Phansopkar P, Wanjari MB.
A Novel Physical Therapy Approach in Pain
Management and Enhancement of Performance
in Shin Splints Athletes: A Case Report. Cureus.
2022 Jul 9;14(7):e26676.
3)Patel DS, Roth M, Kapil N. Stress fractures:
diagnosis,treatment, and prevention.
Am Fam Physician. 2011 Jan 1;83(1):39-46.
この記事を書いた人
あさの接骨院 院長 浅野剛史
あさの接骨院の院長の浅野剛史です。令和2年4月、春日部市上蛭田に当院を開設させて頂きました。
厚生労働省が認定する国家資格である柔道整復師の資格(接骨院の開院にあたり、必須の資格です)を持ち、約10年間、整形外科クリニックに勤務した後、独立開業に至りました。
医学的根拠のある施術方針をご提案して、地域の皆様の健康に貢献していきたいと思っております。