2025年10月03日
体のバランス/競技力やケガとの関係
体重のかけ方や筋力など、身体における様々な左右での差が、スポーツのパフォーマスやケガに関連するという考え方があります。
実際にこのような左右の差が、現在の痛みや競技力に関係していると感じている方は多いように感じます。
競技力との関係
前提として、四肢の長さや顔の特徴にも左右で違いがあるのと同様に、人の身体は必ずしも左右対象とは限りません。
スポーツの世界では「左右差があると競技力が落ちる」、または「ケガをしやすい」と言われることがありますが、最近の研究では必ずしもそうとは限らないことがわかってきました。
Maloneyは、ジャンプ力や方向転換、筋力などを評価した研究で身体における左右差が、これらのパフォーマンスを一律に低下させる証拠はないと結論づけています。
同様にAfonsoらは、左右差は自然な適応であり、必ずしも「悪」ではないとし、むしろ競技特性によっては有利に働く場合もあるとしています。
つまり左右差は、長い期間継続的にトレーニングをしている場合に、その競技特性に合わせて身体が順応した結果とも考えられるということです。
けが・痛みとの関係
身体の左右差とけがや痛みの症状との関連として、Malisouxらの市民ランナー517名を対象とした研究では、走行時の非対称性はケガのリスクと関連しなかったことを報告しています。
これについても競技力と同様に、単に身体的な左右差などが必ずしもケガのリスクとはならない可能性を示唆しています。
左右差は絶対的な改善点ではない
上述の通り、身体における左右差は、必ずしも改善しなければならない要因とは限りません。
確かに他の研究では、左右差が特定のパフォーマスに影響する可能性や、ケガのリスクを上昇させることについて指摘しているものもあります。
しかしながら、これらの結果は限定的であり、大切なことは左右差の存在を正しく評価し、それが生じた要因を考察して、修正が必要なものか否かを正確に判断することと考えます。
身体的な左右差が気になる場合には、動作的な観点や競技特性など様々な要素に対する複合的な判断が求められるため、専門家などへの相談の上、適切に判断するようにしましょう。
【参考文献】
1)Maloney SJ. The Relationship Between Asymmetry and Athletic Performance: A Critical Review. J Strength Cond Res. 2019;33(9):2579-2593.
2)Afonso J, Peña J, Sá M, Virgile A, García-de-Alcaraz A, Bishop C. Why Sports Should Embrace Bilateral Asymmetry: A Narrative Review. Symmetry. 2022;14(10):1993.
3)Malisoux L, Gette P, Delattre N, Urhausen A, Theisen D. Gait asymmetry in spatiotemporal and kinetic variables does not increase running-related injury risk in lower limbs: a secondary analysis of a randomised trial including 800+ recreational runners. BMJ Open Sport Exerc Med. 2024;10(1):e001787.
この記事を書いた人

あさの接骨院 院長 浅野剛史
あさの接骨院の院長の浅野剛史です。令和2年4月、春日部市上蛭田に当院を開設させて頂きました。
厚生労働省が認定する国家資格である柔道整復師の資格(接骨院の開院にあたり、必須の資格です)を持ち、約10年間、整形外科クリニックに勤務した後、独立開業に至りました。
医学的根拠のある施術方針をご提案して、地域の皆様の健康に貢献していきたいと思っております。