2024年11月12日
冷やすべき痛みと温めるべき痛み
体に生じる様々な痛みへの対処法として患部を
「冷やす」、「温める」といった処置は日常的に
行われるセルフメディケーションの一つです。
しかし、今のこの痛みに対しては冷やすべきな
のか温めるべきなのか判断に迷うことは少なく
ないと思います。
この判断に対しては、痛みの状態と冷やすこと
や温めることで生じるそれぞれの効果が重要と
考えられます。
冷やすことの効果
患部を冷やす処置のことをアイシングと言いま
す。
アイシングの効果で期待できることの一つに血
流の抑制があります。
例えば、強く足首を捻ってしまった際には靭帯
などが傷つき皮下での出血が発生し、また炎症
により充血も生じます。
アイシングによる血流への影響は、これらのケ
ガによって生じた反応を抑制すことが期待され
ます。
温めることの効果
慢性的な腰痛や筋肉が凝って痛い場合など、入
浴する事で症状が軽くなることは多くの方が経
験します。
これは血流が促進され、硬くなった筋肉の緊張
が緩和したことが考えられます。
痛み以外には痺れなどの緩和も経験しますが、
類似した反応と言えます。
冷やす、温めるの判断
冷やす、温めるの判断は上述の通り、痛みの時
間経過が一つの指標と言えます。
ケガ”直後”であればアイシングを、”慢性的”な
痛みであれば温めるといった具合です。
当然、例外もあり得ますので、やはり症状に対
する正確な理解は重要と考えられます。
過剰なアイシングのデメリット
誤ったタイミングや過剰なアイシングには、ケ
ガなどの回復に不良な結果をもたらす可能性が
あります。
近年の研究で、ラットのふくらはぎの筋肉を損
傷させて、アイシングと温熱刺激を加え比較す
る実験が報告されています。
結果としてアイシングでは炎症に関連する物質
の消失が遅延し、筋肉の線維化(組織が固くなる
など、正しい機能が発揮できなくなる状態)が認
められた一方、温熱刺激では線維化の抑制が認
められ、さらに筋肉量や筋線維の大きさの回復
を促進したことが報告されました。
まとめ
スポーツの現場など、ケガや痛みに対して患部を
冷やすアイシングは慣習的に行われてきました。
しかし、実際にはアイシングが効果的な時期は限
定的なものと考えられます。
【参考文献】
Shibaguchi T, Sugiura T, Fujitsu T, Nomura T,
Yoshihara T, Naito H, Yoshioka T, Ogura A,
Ohira Y. Effects of icing or heat stress on the
induction of fibrosis and/or regeneration of
injured rat soleus muscle. J Physiol Sci. 2016
Jul;66(4):345-57.
この記事を書いた人
あさの接骨院 院長 浅野剛史
あさの接骨院の院長の浅野剛史です。令和2年4月、春日部市上蛭田に当院を開設させて頂きました。
厚生労働省が認定する国家資格である柔道整復師の資格(接骨院の開院にあたり、必須の資格です)を持ち、約10年間、整形外科クリニックに勤務した後、独立開業に至りました。
医学的根拠のある施術方針をご提案して、地域の皆様の健康に貢献していきたいと思っております。