2025年04月07日
ももから膝裏(膝窩)にかけての痛み/後大腿皮神経
しゃがみ込み動作など膝を屈曲した際に、
太ももの後ろ側から膝裏(膝窩)にかけて
痛みを生じることがあります。
この症状の原因として、後大腿皮神経が
関連する痛みの可能性が考えられます。
膝を曲げると痛む
太ももの後ろ側から膝窩にかけては、複数の
筋肉で構成されるハムストリングがあります。
膝を伸ばすことで、このハムスリングが引き
伸ばされるため、筋肉の硬さなどは痛みの要
因となることが考えられます。
一方、膝を曲げる場合にはハムストリングが
縮む(緩む)ため、痛みの原因として考えにく
くなります。
そこで痛みの原因のひとつとして、後大腿
皮神経の障害を検討します。
後大腿皮神経
後大腿皮神経は仙骨から出る仙骨神経叢の一
つで、知覚のみを担当している神経です。
この神経はその名の通り、大腿(太もも)の後
ろ側を走行し、大腿後面から膝窩の皮膚に至
るとされています。
なんらかの要因により後大腿皮神経が障害さ
れた場合、ももの裏側から膝窩にかけての痛
みが生じることが考えられます。
3層構造の筋膜
膝窩にある膝窩筋は、筋肉を包む筋膜に類似し
た3層構造の膜で覆われています。
https://asano-kasukabe.com/blog/膝の後ろ側の痛み/膝窩筋/
これらの筋膜層は大腿の後ろ側まで広範囲に連
続しており、膝の曲げ伸ばしに際してハムスト
リングの適正な位置関係を保持する役割がある
と報告されています。
3層構造のそれぞれの間には神経や血管が走行
しており、そのうちのひとつが後大腿皮神経で
す。
ハムストリングを構成する筋肉間をつないでい
るこれらの膜状構造が、硬さなどによる影響を
受け後大腿皮神経を障害すると、膝を曲げた際
の太ももから膝窩での痛みを誘因することが考
えられます。
実際にこれらの膜状構造の緊張を緩める治療を
したところ、膝を曲げた際の痛みに改善が認め
られた報告もあります。
その他の症状
後大腿皮神経の障害は膝を曲げた際に痛みが生
じる症状の一例に過ぎません。
その他にもベーカー嚢腫や膝窩筋、半月板、滑
液包などに由来する痛みなど多種多様です。
https://asano-kasukabe.com/knee/
まとめ
膝を曲げた際の太ももから膝窩にかけての痛み
は、後大腿皮神経の障害が影響している可能性
が考えられます。
これは3層構造の筋膜組織の間を走行する、後
大腿皮神経の解剖学的な特徴が影響しているの
かもしれません。
【参考文献】
(1)Satoh M, Yoshino H, Fujimura A, Hitomi J, Isogai S.
Three-layered architecture of the popliteal fascia that
acts as a kinetic retinaculum for the hamstring
muscles. Anat Sci Int. 2016,91(4):341-9.
この記事を書いた人

あさの接骨院 院長 浅野剛史
あさの接骨院の院長の浅野剛史です。令和2年4月、春日部市上蛭田に当院を開設させて頂きました。
厚生労働省が認定する国家資格である柔道整復師の資格(接骨院の開院にあたり、必須の資格です)を持ち、約10年間、整形外科クリニックに勤務した後、独立開業に至りました。
医学的根拠のある施術方針をご提案して、地域の皆様の健康に貢献していきたいと思っております。